約束 V




「ヒカリ!」
「タクヤっ!ごめんね?待たせちゃって……!」
「ん、いーよ。ってか、何してたの?」
「え……えっと……」


……言っちゃっていいのかな……
タクヤは私の様子で感づいたのか、私の方をまっすぐ見た。


「全部言って?怒ったりしないから。逆に、隠そうとするなら怒るよ?」


ちょっと怖い顔で言うタクヤ。
でも私にはわかる。これがタクヤの優しさなんだって事。
隠したままで一番辛いのは私だ って
隠さずに言えばスッキリするよ って
ぶっきら棒だから、言葉を変えて伝えているだけ。


「……じゃ、話すよ?」
「よろしい」


ニコッ……と笑うタクヤ。
どうか私が話し終えた後も、こうして笑ってくれますように。


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「……で、告白は断ったけど友達になったってわけか」
「う……うん」


全てを話し終わった後、当たり前だけどタクヤは笑顔じゃなかった。


「タクヤぁ……」
「何」
「怒って……る?」
「別に」


怒っているなら、そう言ってくれればいいのに。
ただ無口でいられても、逆に深読みしてしまうし、不安が重なる一方。




「……あーもうっ!」
「え、何?」


いきなり 投げやりな態度を取られても……。


「オレ、本当に怒ってないよ」
「……?」


ならどうして……そんなに機嫌が悪いの?


「ただ……」
「“ただ……”何?」
「……やっぱ、言わない」
「え!?言ってよ!」
「だってさ……」
「何?」
「言って、ヒカリに嫌われたらイヤだし」
「……。」
「ヒカリ?」


「全部言って?嫌ったりしないから。逆に、隠そうとするなら嫌うよ?」


私がそういったら、妙に引きつっていたタクヤの顔が和らいだ。


「ははっ。さっきのオレの台詞にそっくり。
 ……結局、ヒカリには負けちゃうな」
「……話してくれる?」


その言葉に、タクヤは小さく頷いた。




「別に、ただちょっと……心配なだけ」


心配……?


「ねぇヒカリ、絶対絶対、マサキを一人の男として好きにならないで?」


そう話すタクヤは、いつものかっこいいタクヤとは少し違っていいて、
どちらかと言えば、なんだか可愛い感じ。
好きな人からの返事を、不安そうに、恥ずかしそうに、寂しそうに、
一言返してもらうまで待っている、片思いの女の子みたい。


「くすっ」
「何だよ〜……」
「タクヤ、可愛いなーって思って」
「ヒカリの方が可愛いよ」
「今日のタクヤには負けるって」




「……大丈夫だからね?」
「え、何が?」
「私は、タクヤだけだから」


そう言うと、少し顔を赤らめてタクヤは微笑んだ。


……けれどすぐに寂しそうになるタクヤの顔と
私達の真上で飛んでいる鴉の大群に
私は気づいたが……何気なく考えそっぽを向いた。








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